小児脳死判定臓器提供 第2話後半

2012年06月28日 18:52

それから、米軍病院医師は、両親に脳死臓器提供の説明を始めた。
初日は、すこしだけ。
翌日は詳しく。
さらに、次の日も。

充分な説明を受けて、十分な時間をかけて両親は決断した。
「脳死臓器提供承諾」
米軍病院医師は、米国本国と連絡を取り、
子供を、ジェット機搬送する手はずを整えた。
人工呼吸つきで。
子供は、八戸から、三沢米軍基地へ移動し、
それから、沖縄、そして米国へ移った。

その後のことはわからない。

子供の死を、脳死として受け入れることのせつなさ。
医療者も切ない。
両親はもっと。
両親に脳死を理解してもらうには
何度も、繰り返し説明する必要がある。
両親は、同じ説明でも、解釈の仕方が日によって変わる。
それを理解できたら今度は臓器提供の話。
詳しく、臓器提供を説明する。
何故、臓器提供が必要か説明する。
説明に十分日数をかけて。
脳死臓器提供を受け入れる決断には、時間を要する。

今回の米国人の子供の脳死判定、臓器提供で学んだこと。
難しいのは、脳死判定ではない、
両親に脳死を受け入れてもらう説明と、臓器提供を決断してもらうための、
説明方法だ。

臓器移植を待つ子供とその両親。
脳死を受け入れる両親と子ども本人。
両者を思う真心が救急医に必要なことはわかった。
小児科医に必要なことがわかった。

緊迫する場面、あわただしい場面でも、まごころを医師の胸にしっかり持とう。

先日小児脳死臓器提供が日本で始まった。

脳死判定方法を教える教科書はある。
しかし、まごころは、自然に身につくもの。
教わるものではない。
われわれ救急医のまごころがためされる。
臓器提供は「たまたま」起こるのではない。
救急医、小児科医と両親との、まごころの通い合いがまず最初の一歩だ。

救急医学の最先端にドクターヘリがある。
ドクターヘリを飛ばし、その患者の多くを自ら受け入れ、
そして、手術、リハビリまで持って行けるのは成熟した救急医療の証し。

その中で、救命不能になった患者の家族に、
脳死と臓器提供の説明をする。
数多くの説明した患者の中から、
承諾してくれる家族が現れる。
そして、確実に移植へ橋渡しをする。
これも、成熟した救急医療の証し。

北国の田舎の救命救急センターと侮ってはいけない。
ここには、まごころと、知識、技術、経験を持った救急医が数多く在籍する。
私と共に。
(小児脳死判定臓器提供 第2話完)

第3話は、あさってです。



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