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子宮外妊娠大出血 最終

2019年09月16日 18:33

「子宮外妊娠、いまだにショック、手術、輸血必要」
僅か15秒の通話で私は電話を切った。
血圧が正常化しているが、ショックと判定し、
それをしっかりERに伝えた。
8時27分離陸。
現場滞在時間9分だ。
早い。
OJTシートには、夫が座っていた。
8時45分八戸市立市民病院ヘリポート着陸。

八戸ERでは、産婦人科医師と救急医が固まりになって待機していた。
9時5分O型緊急輸血が、暖めながら開始された。
現場に着陸して診察を開始してから47分だ。
輸血開始にも関わらず、
血圧は85/44に落ちた。
さらに70/30に落ちる。
想定内の展開だ
9時45分
女性は、手術室へ移動した。
出血量は2L。
輸血量は8単位。

予想通りだ。
劇的救命。

子宮外妊娠大出血 完

子宮外妊娠大出血 その3

2019年09月15日 18:32

輸液量は出血量の3倍必要だ。
まだ、1.5L入っただけだ。
6L予定だから、半分も入っていない。
だから、この瞬間に血圧が100以上あって
正常化したように見えても、
じきに血圧はまた下がるだろうと思われた。
輸血が必要だ。
血液量の30%以上を失うと輸血が必要になる。
体重50kgとして7%が血液なので、3.5Lが血液だ。
腹腔内出血が2Lだとしたら、35%に当たる。
35%の出血は輸血が必要だ。
もし、輸血が必要と判断されれば、
早く輸血したほうが救命率が高いことは外傷で証明されている。

出血性ショックは、止血までのスピードが勝負。
止血が遅れると出血が増える。

呼吸数は24回。
20回以上が異常だ。
出血性ショックによるアシドーシス(血液酸性)を治すために、
呼吸数が増えているのだ。
血液ガス分析をしなくても、
頻呼吸から、アシドーシスの
おおよその予想がつく。
女性は、安定しているのではない、
見かけの数字がいいだけ。
必ず、これから悪くなる。

この様な、患者をtransient responder という。
結果は、30分後にわかる。
30分後に、血圧が下げっていれば、
仮説どおり。
それを見越して、現場時間を短くする。
目的は、悪くなる30分より前に輸血と止血を行うことだ。
だが、この現場からでは不可能に近い。
ER1まで遠すぎる。
「八戸救命へ搬送です」みんなに聞こえるように宣言した。
加藤ナースにヘリコプター収容をお願いし、
私は
ダイレクトブルーPHSに電話を入れた。
(続く)

子宮外妊娠大出血 その2

2019年09月14日 18:30

超音波検査で腹腔内出血あり。
子宮内に赤ちゃんの袋なし。
尿検査で妊娠反応あり。
ショック(血圧低下)。
子宮外妊娠の診断は容易だ。

ショックの患者は、
血管が縮む。
診療所医師は、点滴の針を刺すのに手間取った。
ソケイ部の大腿静脈に点滴を取った。
診療所受診時は
血圧76・45

ドクターヘリでわれわれが接触時には血圧は改善して
血圧103/45.
診療所での治療効果だ。
点滴は、ショックの鉄則どおり
2つの部位に入れられた針から全開のスピードで落とされていた。
「これまで1.5リットル終了」診療所医師が言う。
私は、バイタルサインを確認し、
全身評価をした。
救急隊長に、救急車をドクターヘリに近づけるようにお願いした。
メインローター(プロペラ)が止まれば、
その、2m外側まで車を近づけられる。
ただし、近づきすぎはメインローターを傷つけることがあるので厳禁。
車は隊長の指示でゆっくりと動いた。
移動する車内で、私はようやく腹部を診察した。
ショック状態の患者の診察は、
気道、呼吸、循環、意識、体温の順で診察する。
それから腹部だ。
超音波検査では腹部に水がたまっていた。
水に見えたのは出血そのもの。
量が多い。
2Lはありそうだ。
(続く)

子宮外妊娠大出血

2019年09月13日 20:30

朝の会議中だった。
ドクターヘリ出動要請がPHSでかかってきた。
「〇〇村から、ショック状態の女性。子宮外妊娠疑い。
機体の整備が済み次第離陸します」午前7時45分だった。
朝8時半からスタンバイに入るドクターヘリだが、
朝の機体整備は8時15分頃に完了する。
まだ整備中の出動依頼だった。
整備長は焦ることなく、整備を進める。
そして、いつより早く整備完了した。
ヘリ番加藤ナース。
加藤ナースは、医療資器材の機体への積み込みを急ぐ。
一晩充電した医療資器材と、救急バッグを押し車に載せて、ヘリポートへ運ぶ。
ヘリ番の私は、整備終了する少し前にヘリポートへ向かった。
緊急出動時は、廊下を走るのだが、
今日は、その必要がない。
EC135はヘリポートに出されていた。
機長がちょうど乗り込み、ヘルメットを被るときだった。
まだエンジン停止している後部席に私は乗り込み、シートベルトを締めて、白いヘルメットを被った。
左向かいには加藤ナースが座り、物品の整理をしていた。
機長は後ろの我々に、
天気のこと、日没時間のことを告げてくれた。
そして午前8時離陸。
定時開始は8時半なので、30分も早い。
天候は少し雲はあるが、遠くまで見わたせる。
右に太平洋、左に小川原湖を眺めながら高度500mを双発エンジンのEC135が北上する。
北欧の風景に似た、風車と針葉樹、大小の湖沼、なだらかな丘陵の風景が六ケ所村だ。
○○村〇石運動公園駐車場には
8時18分着陸した。
北消救急41は、すでに先着していた。
EC135のメインローターが回っている間に、
われわれは救急車に乗り移った。
女性は、真っ白な顔色。
脈拍は弱く、早い。
冷や汗あり。
強い腹痛。
からだを動かさないのは、腹痛が強い証拠。
腹膜炎など、強い腹痛では、
七転八倒しない。
女性は、約1時間前に診療所を受診していた。
(続く)

深夜ピックアップドクターカーで医師3名出動 最終

2019年02月10日 18:50

胸腔ドレーン後の胸部レントゲンでは、
右胸部の頭側に白い大きな陰影があった。
まだ血胸が大量に胸に残っている。
胸腔ドレーンは、前医から合計で1.8Lとなった。
「胸腔ドレーンからの出血が1.8L,
まだ胸に血液が約1L血餅で残っています。
手術により予想出血が0.5L.
予想総出血量は3.3Lです。
体重54kgで全血液量は3.8L.
ほぼ全血液量が出血ででてしまいます。
赤血球輸血で全て置換されることになります。
赤い血だけを入れて凝固因子(血漿)を入れないと
凝固障害が出ます。
血が止まりません。
さらに血小板も数が減ります。
全血液が出血で出てしまうと赤血球輸血だけでなく、
凍結血漿輸血、
血小板輸血が必要です。」と私
後村医師は、
輸血申し込みを追加した。

CTの結果では、
心配した腕頭動脈損傷はなかった。
患者は、予定通り手術室へ移動した。
全身麻酔は伊沢、田中、後村医師が担当した。
麻酔がかかった後で
患者を左側臥位にして手術台に固定した。

手術は
私、吉岡、山端医師で行った。

右開胸すると、
肺破裂があり出血していた。
肺を修復し止血した。
手術は難しくはなかった。
(続く)