冬の川に落ちた女性の劇的救命 最終

2017年03月05日 18:01

冬の川に落ちた女性の劇的救命 最終
ERでは
太いチューブが動脈と静脈に2本鼠径部から入れられた。
血液温度25度の黒い血液が吸引される。
血液温度計は低い数値を示していた。
黒い血は、人工肺に入る。
そして、39度に加温され酸素化された血液が再び
鼠径部のチューブから女性の動脈に戻る。
PCPSが回り始めた。

ドクターヘリが病院ヘリポートに着陸してから10分、
血管造影室入室後7分で
PCPSが確立した。
早い。
心室細動は続いていたが、
胸骨圧迫は終了した。

血液温は32℃まで順調に上がった。
今度こそと思い、電気ショックを行う。
うまく行った。
心室細動はなくなる。
代わりにきれいな心電図の波となる。
心拍再開した。
瞳孔6-/6-、対光反射はなし。
自発呼吸なしだった。
女性は頭部CT撮影に移動した。
CTでは、心配した脳虚血のサインはなかった。

救命救急センターで次第に瞳孔は縮瞳して
光の反射も
自発呼吸出現し、
手足を動かすようになった。

3日目、人工呼吸を終了し、
PCPSを終了できた。

4日目、
食事開始した。
家族は喜ぶ。
「元通りです」

劇的救命だ

冬の川に落ちた女性の劇的救命 完

冬の川に落ちた女性の劇的救命  その4

2017年03月04日 18:00

近藤医師は、気管挿管後に八戸ERに電話を入れた。
「偶発性低体温症で心肺停止、VF継続しています。
ここから、ヘリコプターランデブーポイントは移動し、
ドクターヘリに収容し、
ERに着くまで早くて25分後です。
八戸ERでPCPSと
血管造影室の準備おねがいします」
「了解」藤田医師


ドクターヘリの白い気体が救急車の運転席のフロントガラスから見えた。
救急車の後部は窓にカーテンがされている。
通常はカーテンのために外は見えない。
室内から前を見ると、
外の雰囲気がよくわかる。
フライトスタッフと消防は
CPRを継続しながら
女性をドクターヘリに収容した。

機長がエンジンスタートさせた。
ふわりと期待が浮かんだと思ったら、
急速度で、空に近づく。

離陸後12分でEC135は八戸市立市民病院に着陸した。
胸骨圧迫は継続している。
自動胸骨圧迫装置が正確に心臓を押していた。

心室細動の女性はヘリポートから
直接、
血管造影室へ移動した。
血管造影室に入った。
両鼠経部のイソジン消毒が始まる。
茶色の変色は消毒の後。
右大腿静脈へ
ルートは現場ですでに確保済み。
大腿動脈のみを確保すればいい。
(続く)

冬の川に落ちた女性の劇的救命  その3

2017年03月03日 18:55

赤車はすぐにランデブーポイントを出発した。
ウーウーサイレンがうるさく響く赤車の室内。
医師たちは、
患者接触時の手順を確認する。
赤車と救急車は10分後にドキング成功した。
予想より救急車は南下して近づいていたのだった。

医師たちは救急車に乗り移った。

救急隊はCPRを行っていた。
「えっつ、
CPAだったか!」
近藤医師は、予想はしていたものの、
上空で最後に聞いた患者情報とちがうことで、
愕然とした。
CPAの情報はERにのみ伝わっていたのだった。

女性の体は死人のように冷たかった。
冷えた川の水でびしょぬれの着衣はすでに脱がされていた。
近藤医師はCPRの位置、深さがいいことを目視した。
頸動脈を触る。
CPRをやめてもらった。
「脈なし」近藤医師
「車を出してください」近藤医師
救急車は走りだした。
走りながらでも処置ができるのが
ドクターカードッキングの強みだ。
救急救命士だけだと、
マンパワーが不足するので、
一つ一つの救急処置を丁寧に安全に行う。
だから、停車中に処置を行うことが多い。
運転手(機関員)の手も借りて、
3名全員で処置をすることが多い。
ドクターカードッキングで、
機関員を運転席においても、
後方で2名の救急救命士と1,2名の医師がいるので、
緊急処置は可能となる。
現場滞在時間の短縮につながる。
揺れる車内で、
近藤医師と看護師は
気管挿管。
田中医師は静脈路確保。
アドレナリ注射。
心室細動にCPRを継続しながら
救急車はドクターヘリが待つランデブーポイントへ走る。
(続く)

冬の川に落ちた女性の劇的救命 その2

2017年03月02日 18:53

フライトドクターの近藤医師と田中医師、ナースは赤車に乗り込む。
ウーウーサイレンで赤車は北に向かった。

少し前、
ドクターヘリがまだ飛行中のころ、
女性を搬送中の救急車で急変が起こる。
救急車収容したショック、意識障害の
低体温症の女性、
酸素投与して、現場を出発した直後だった。

顔色が悪くなり、
呼吸が浅くなる。
心電図モニターは心室細動だ。

救急隊長はすぐにCPRを開始した。
隊員は、AEDを装着する。

頸動脈は触れない。
心停止だ。
隊長はAEDの電気ショックボタンを押した。
電気ショックは確実に女性の心臓に到達した。
だが、心室細動は治まらない。

だめだ、
救急隊長は、
電話をする。
八戸ERへ。
「低体温症、先ほどから心室細動となり、
電気ショック1回。
しかし、戻りません。
このまま、ドクターヘリとランデブーします」

ERでは、ドクターカーV3の出動準備を始めた。
天候が思わしくない。
ドクターヘリが着陸できなければ、
ドクターカーV3を出す。
ERは、急に騒がしくなった。
藤田医師は、CS室に入った。
「ドクターヘリが着陸できなければ、
ドクターカーV3を出します。
ドクターヘリの現在地は?」
「たったいま、十和田市に着陸しました。
でも、現場は離れています。
そこから陸路、赤車移動です」CS
「着陸できそうなら、ドクターヘリに任せます。
ドクターカーV3は出しません」藤田医師
ERではドクターカーV3の準備で全員が動いていた。
「V3中止です」
藤田医師は宣言した。
数分後、再びERはいつもに戻った。
ほぼ同時刻、ドクターヘリはランデブーポイントに着陸した。
ヘリコプターは着陸すると、
無線が届かなくなる。
CPA情報は無線以外の方法でドクターヘリへ伝えることになる
(続く)

冬の川に落ちた女性の劇的救命

2017年03月01日 18:52

女性は朝8時前には、
いつも通りに朝ご飯食べた。
少しして、家族は仕事に出かけた。

13時過ぎに家族は仕事から帰り、
女性の部屋を見に行った。
見あたらなかった。
不審に思った家族は
家の周りを探した。

認知症で迷子になっているのではないだろうか?
探す範囲を少しずつ離れた場所まで広げた。
13時45分くらいに家の裏の川(水位10~20cmくらい)の中で、
側臥位で倒れているところで発見。
運がいい。
冬の川は水かさが少なかった。
溺れるほどは水がなく、
でも、体の半部くらいは水につかっていた。
冬の川の水温は零度近い。
着衣はジャンバー2枚くらい着ていたが裸足だった。
冬の北国の川であり、
体温低下は簡単に予想できた。

救急隊接触時は、
血圧sBP60台、心拍数60台、shockだ。
開眼していたが視線は定まらず、
声かけしても反応なかった。
ただ、手は動かしていた。
意識障害あり。
救急車はドクターヘリとのランデブーポイントに向かった。

患者の発生場所の上空は雪雲の影響でヘリコプターはそこまで進入不能だった。
替わって、そこより南の街十和田市にランデブーポイントを設定しなおした。
低気圧の影響で、
視界がわるく、
ドクターヘリは十和田市より北には進めなかったのだ。
結局ドクターヘリは、発生場所より南の十和田市に着陸した。
そこから、十和田市の消防本部の協力を得て、
赤車で前進する。
その距離緊急走行で15分くらい。
(続く)