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移動緊急手術室元年

2018年06月11日 18:07

救急医学会東北地方会が6月16日山形市で開催されます。

一般演題に採用されました。
「移動緊急手術室元年」

【はじめに】
遠隔地で発生した出血性ショックと心肺停止に対して、
現場近くに根本的治療が可能な手術室を出動させることで救命する研究を
2012年八戸工業大学と共同で開始した。
2013年青森県ライフイノベーション戦略に指定された。
2014年試作車1号、2号(ドクターカーが手術室を牽引する)実験を行ったが国土交通省から使用許可が下りなかった。
移動緊急手術室運行前段階として、
有効が推測される症例がどの程度あるかを明らかにするために、
過去5年間の八戸ドクターカーの長距離出動例を後方視的調査した。
2015年試作車3号(自走式)が当院倫理委員会で承認された。
2015年10月3号実車が完成した。
2015年11月青森県庁から
「病院の手術室以外で手術を行うことは医療法上認められない」と移動緊急手術室の使用中止通達が届いた。
2016年2月23日衆議院で「ドクターカーの中で手術が可能であると判断すべきではないか」と議論がされた。
2016年6月厚生労働省から
「緊急避難的にドクターカーの中で手術を行う場合は(手続きがなくても)やむを得ない」と回答が来た。
2016年7月1日移動緊急手術室・ドクターカーV3の運用を開始した。

【結果】
2年間で要請10件(外傷2例、
心肺停止8例)、
途中キャンセル7例、
病院前 extracorporeal life support(PH-ECLS)実施3例、
外傷開胸手術なし。
PH-ECLSの3例中1例はCPC1で退院した。

【考察】
フランスのドクターカーを運営するSAMUはMobile ICUで医師が現場へ出動し、
PH-ECLSを開始している。
彼らは、車両内ではなく、青空下、建造物内でもPH-ECLSを行っている。
適応は
AEDを用いたCPRに20分以内に反応しない症例で、
No flow time<5分
かつVF/VTまたはPEA、
かつETCO2>10mmHg
かつ虚脱後60分以内の開始(100分まで許容)となっている。

【結語】
衛生面を考慮した移動緊急手術室を開発したが、
医療法に抵触し使用開始が遅れた。
フランスでは同手術を青空下で行っている。
制度の違いを感じた。

ドクターカーV3国際救急学会発表

2018年06月08日 18:21


国際救急学会がメキシコで開催されています。
私、吉岡勇気医師、吉村有矢医師が発表します。

私の発表は
ドクターカーV3の3例
ICEM2019 ドクターカーV3 - 500ー
ポスターのデザインは藤田健亮医師です。
MOREs の命名は軽米寿之医師です。

3cases of Prehospital ECPR in the Mobile Operating Room

Akihide Konn, Tatsuya Nodagashira,
Hachinohe City Hospital, Department of emergency and Critical Care Medicine,Japan


Abstract–
Introduction:Mobile Operating Room for Emergency surgery (MOREs) can be potentially effective for saving lives by starting Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation (ECPR) from the site near the scene. MOREs brings 3Drs and the ECMO devices. We construct a simplified theater for 5 minutes. MOREs enables early ECMO implantation and emergency thoracotomy.
Case1:A-45-years-old woman accidentally felt from the bridge and drifted down the river to the sea in winter. The EMS pulled her up from the sea and found her in cardiac arrest. A rapid response car dispatched in advance and started the ACLS. MOREs with 3 doctors and 2 clinical engineers dispatched because she needed prehospital ECPR. We started ECPR in MOREs 5 minutes after unsuccessful standard ACLS resuscitation. She was transferred to the hospital for 20 minutes and rewarmed, then the return of spontaneous circulation was archieved. Days2, she was weaned from venoarterial extracorporeal membrane oxygenation (V-A ECMO) and mechanical ventilator. Days4, she was discharged from the intensive care unit and a few days later, she left the hospital with CPC 1.
Case2: A-66-years-old man became cardiopulmonary arrest(CPA) 45km away from the hospital and the by-stander instantly started CPR. 9 minutes after CPA, the EMS arrived at the scene, the ECG rhythm was ventricular fibrillation(VF). We started ECPR in MOREs 61 minutes after CPA and it took only 13 minutes to establish V-A ECMO. ECMO was successfully discontinued. But he died at day 7.
Case3:A-age-unknown man suddenly became CPA 48km away from the hospital and the by-stander started CPR. 10 minutes after CPA, the EMS arrived at the scene, the ECG rhythm was VF. We started the ECPR 62 minutes after CPR and established V-A ECMO after 84 minutes. But the spontaneous circulation didn’t return.
Conclusion: Prehospital ECPR in MOREs can shorten the time to restart circulation when it takes a lot of time to transfer the patient to the hospital.It was unsuccessful to the CPA patients 45km away from the hospital but successful to the patients 10km away from the hospital. Further research is necessary to decide the adaptation of the ECPR in MOREs according to the distance from the hospital.
ICEMメキシコ500

ICEMメキシコ500-2002

ICEMメキシコ3,500

移動緊急手術室ドクターカーV3出動おいらせ消防編 最終

2017年01月14日 18:28

ドクターカーV3に無線が入った。
ドクターカー1号で先行していた
藤田医師からだった。
「意識障害あり、昏睡状態、
循環はよし。
心臓破裂ない。
腹腔内出血ない。
大量血胸ない。」
近藤医師が答えた。
「ショックでなければ手術室の必要はないですね」
「そう思います」
「輸血はどうしますか」
「輸血はもらいたい」

近藤医師の情報は全員に伝えられた。
3分でほぼ出来上がった手術室であったが、
幸運にも、
使う必要はなくなった。

5分後に、
十和田救急車がおいらせ消防に到着した。
救急車のスライドドアが開く。
「今センター長、乗ってください。
万が一、手術が必要なら
ERについてからです。
輸血は載せます。」
藤田医師が指示した。
私は、輸血を持って救急車に乗り込んだ。
すぐに、
救急車は八戸ERに向かった。

30分後、十和田救急車は八戸ERに着いた。
CT検査では、頭部外傷だった。
今野部長が頭部外傷の手術を開始した。

出血性ショックに対するドクターカーV3の出動決定は難しい。
確実性を求めると、出動まで時間を要する。
素早い出動だと、今回のように
空振りする(オーバートリアージ)こともある。

遠隔地から搬送される出血性ショックには、
オーバートリアージが容認されると思うが、
今後の経験を積んで、
ドクターカーV3の出動決断基準を決めたい。

移動緊急手術室ドクターカーV3出動 完

移動緊急手術室ドクターカーV3出動おいらせ消防編 その2

2017年01月13日 18:27

病院正面を出たところで、
サイレンスイッチをオンにした。

国道45線を北上した。
目指すは、十和田市方面。
ただし、先行している
ドクターカー1号がどこで救急車とドッキングするかで、
ドクターカーV3のランデブーポイントも決まる。

最遠で、十和田市の南東の六戸町、
最短で、六戸町の南のおいらせ町、
このどちらかであろうと予測した。

まもなく、
八戸消防より無線が入る。
「ドクターカーV3はおいらせ消防署をランデブーポイントとする。」
「八戸ドクターカーV3了解」
上十三(かみとうさん)消防指令センターと八戸消防が相談した結果だろう。

イオンモールを過ぎて少し北に向かうと、
道路沿いにおいらせ消防がある。

ドクターカーV3はおいらせ消防にウィンカーを挙げて
速度を落とした。

おいらせ消防署では車庫の一部分を開けてくれていた。
シャッターの向こうはまぶしい光があった。
そこに、ドクターカーV3は車の頭を先頭に進んだ。

十和田救急隊とドクターカー1号がドッキングしたとういう無線が入った。

おいらせ消防では辻井指導救命士が指揮していた。
消防隊と救急隊総出で、
ドクターカーV3の尾部に、
手術室を作る。

消防隊員は、
スチール製の柱を2本、
車両の後方2mに立てた。
別な消防隊員は
柱と車両のハッチドアをつなぐ天井部分の骨組みを組み立てる。
別な消防隊は床に防水シートを敷く。
別な消防隊員は、排気管を外へ誘導する延長ホースを接続した。
救急隊員は
車両の両側に脚立を立てて、
屋根の収納箱を開ける。
中にグレーのテントが入っている。
それを引き出す。
濱舘医師は、手術器具を並べる机を組み立てた。

冬の零下の気温だったが、
消防署のシャッターが閉まっているせいか、
寒さは感じなかった。
(続く)

移動緊急手術室ドクターカーV3出動  おいらせ消防編

2017年01月12日 18:25

ドクターヘリスタンバイが終了した夕方、
十和田市からドクターカー出動要請が入る。
「交通事故、意識ない、ショック状態」
藤田医師と伊沢医師はドクターカー1号で出発した。
八戸ドクターカーは八戸市と周辺の市町村で運営する市町村が出資するドクターカーだ。
国からも特別交付税で応援してもらっている。
国からの補助があるということは、
別の見方をすれば
国営だ。

八戸市長は言う。
「定住自立圏にこだわらず、
困っている患者がいるときは、
範囲外へも出動してよろしい。」

十和田市は八戸から北に約30km
ドクターヘリなら12分くらい。
しかし、陸路では国道が大きく迂回する道のり。
定住自立圏の範囲外。

ERでは受け入れ準備が始まる。
ただし、十和田市までは陸路1時間近くかかる。

昏睡状態になるくらいのショックなら、
止血術か輸血をしないと、
途中で心臓が止まる。

私は、移動緊急手術室ドクターカーV3の出動を決定した。
今日のドクターカーV3当番は濱舘医師。
夕方のERには濱舘医師をはじめ、
多くの救急医がそろっていた。

「十和田市の出血性ショックに
移動緊急手術室を出す。
O型輸血4単位用意して、
開腹、開胸セット用意して、
吸引セットも積むよ。
5分後出動しよう」私

濱舘医師は、ドクターカーV3のエンジンキーを持って、
ERから消えた。
黒木研修医は検査室へ走る。
O型輸血をもらいに行くために。
村田医師は、検査室に電話する。
「移動緊急手術室で外へ、
O型輸血を持ち出します。
4単位。
払い出しおねがいします」
近藤医師は、救急室受付へ走る。
「身元不明、救急〇〇番男でカルテ作ってください」

濱舘医師はドクターカーV3の赤色灯を回転させて、
バックでER玄関に車を付けた。
時計は5分をわずかに超過したが、
ドクターカーV3は、
出血性ショックの交通事故患者に出動した。

「八戸移動緊急手術室ドクターV3より
上十三(かみとうさん)消防指令センターどうぞ、
ドクターカーV3は、
十和田市交通事案に出動します。
ランデブーポイントの設定を八戸消防、
十和田消防で相談して決めてください」
「上十三(かみとうさん)消防指令センター了解」
(続く)