質問 脾臓損傷

2016年04月03日 18:26

川越救急クリニックの木川副院長から質問を頂きました.
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「お久しぶりです。
木川です。
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新年度も始まり、八戸はより盛り上がっていることでしょうか。
当院にも今年度から
自治医大さいたま医療センターの
救命センター後期研修医が研修目的で来ることになりました。
ところで、今先生にお聞きしたいのですが、
小中学生(10-14歳くらい)の
スポーツや交通外傷などで
遅発性に脾損傷が
判明するということは良くあるのでしょうか?

受傷後、腹痛や側腹部痛はあるものの、
超音波検査で腹部出血がなく(FAST陰性)
その何時間後に腹痛が増悪して、
脾損傷が判明するということは多いですか?」



お答えします

超音波検査で腹部出血がない脾損傷は、
すなわちGrade1の被膜下損傷のことです。

腹腔内出血が少ないので超音波で検出されません。
過小評価されます。
何らかの原因で、被膜から血餅が離れれば腹腔内出血が始まります。

その後出血量が多くなり、手術や輸血に至るのが、
成人のGrade1で5%。
小児は被膜が厚いのでさらに頻度は少ないです。

しかし、小児の脾臓は外力を受けやすく、
それは肋骨からはみ出ているためですが。
遊具や、自転車ハンドル、運動、事故と原因も多いです。
これらのせいで小児に脾臓損傷自体が多いのです。
そのため、初診時に脾臓損傷ないと思われても、
後に気付かれることもよくあります。
(最初からあったはず)

成人で脾臓再出血は90%が72時間以内に起こります。
成人で受傷後48時間で反復CTを撮影するプロトコルを用いて、
7%の患者に早期または遅発性の仮性動脈瘤が見つかります。

出典は
The trauma manual
4thからです。
・・・・・・・

「the trauma manual」は
実は軽米医師が中心になって現在翻訳中です。
今年の秋ごろには、
書店に並ぶでしょう。
ご期待ください。

さらに濱舘医師が中心になっての翻訳本
こちらは外傷だけでなく
救急医療全般+集中治療
「Decision making」は夏ごろに
書店に並びます。

そして
「情熱外傷診療」の書籍は5月出版予定です。
現在分担執筆を終了し、
校正段階です。
こちらは、八戸救命医師が全員で
書いている教科書です。
・・・・・・

日常診療の合間に、
睡眠時間を削って原稿作成は大変です。
しかし、
書店に並ぶ教科書に「八戸救命」の文字が常に
出続けることが、
最大の広報です。
最大の人集め効果です。
それを怠ると、
よくある、
地方の市民病院になり、
直ぐに医師不足に陥ります。

ここ八戸に救急医師が集まるのは、
このような、
八戸の救急医師たちの執筆努力によるものです。

意識判定

2015年08月05日 18:52

質問を頂きました。
> いつもブログを拝見させていただいております。
> とても熱い思いがひしひしと伝わってきます。
> 1つお聞きしたいことがあるのですが、
意識確認の際にJCSとGCSをどのようにして使い分けているのか教えて下さい。

お答えします。

数秒で意識判定する時は、
開眼のみで判定する、JCS一桁、二桁、三桁を使います。
自発開眼していれば一桁、
刺激で開眼は二桁、
開眼しなければ三桁。

詳し意識を判定する余裕がある時や、
意識が悪化、あるいは改善したこと比べて知りたいときは
グラスゴーコーマスケールGCSを使います。

また、次のような使いわけもします。
軽症を区別したいときはJCS.
重症を区別したいときはGCSと言う使い方もします。

また、会話で使う時は相手により使い分けします。
医師会開業の先輩医師と話す時はJCS。
若い医師と話す時はGCS。

普通の看護師と話す時はJCS。
救急看護師の時はGCS

などです。

電撃傷2例 その2

2014年09月14日 18:05

電撃傷の解説です。
医療者向けです。
市民のみなさんごめんなさい。

電撃傷はそれほど多く発生するケガではありません。
未経験の医師が多いのです。
だから、ここで解説します。

電撃傷の診断は通常,患者や家族,救急隊から得られる病歴から容易である.
しかし,時に目撃者がなく,意識障害で発見されることもある.
病歴聴取で重要なことは,電圧の大きさ,直流か交流か,
通電持続時間,電流の通り道,皮膚の濡れ具合を知ることである .
外傷の標準治療である,JATECに沿いPrimary survey後に ,
Secondary surveyとして,皮膚の熱傷や,二次的な外傷の評価を行う.
頸椎損傷の評価は必ず必要である.

12誘導心電図と心電図モニタは
600v以上の高電圧感電では全例必要である.
低電圧でも,意識障害,健忘,神経学的異常所見あり,
動悸,胸痛,不整脈の症状がある場合は検査すべきである.

小さな病院から移送の判断基準
気道呼吸循環意識に異常があれば、高次医療機関へ転送する。

患者の診かた
電気による損傷の原因は労災によるものが多く,
次に幼小児による電気設備施設への興味本位の進入,
釣り竿の送電線への接触である.
電撃傷は生体内通電経路で電気抵抗となった生体組織がジュール熱を発生して,
通電経路に断続的,不整形に生ずる損傷である.
電撃傷の体表損傷は,いわゆる流入創,流出創での
電気メスによる傷に似た
乾性の大小・深浅のⅢ度熱傷(電流斑)である.

検査とその所見の読み方
尿潜血が陽性で,沈査で赤血球尿がないときは,
筋肉損傷から流出したミオグロビンを示している.

筋肉損傷を伴う重症電撃傷ではCPKは5桁まで上昇する.
肝機能異常と,アミラーゼの上昇を認めた場合は,
腹腔内合併損傷を疑い,超音波検査とCT検査を行う.

鑑別すべき疾患と鑑別のポイント
高所電気工事現場から墜落した場合、電撃傷、意識障害先行、過失の鑑別が必要.
意識障害先行は以下の「S」が原因となる。
①血糖(Sugar)
②失神(Syncope)
③脳卒中(Stroke)
④痙攣(Seizure)
電流斑に似た乾性の皮膚潰瘍としては,
焼火箸などによる傷でも似た損傷となる.
内因性疾患で心停止し,その後に感電しても同様な皮膚潰瘍が生じることより,
電流斑のみから感電とは言えない.
先に重要な病気があったのかもしれない。


合併症・続発症の診断
不整脈を見落とさない。
心室細動に備えて除細動器を準備する。
アーク放電では7,000〜22,000℃の高熱の衝撃波によって患者の体は吹き飛ばされ,
骨折や内臓損傷を合併することがある.


治療法のワンポイント
電撃傷では,電源を切って患者を電源から安全に救出する.
重症であれば,乳酸リンゲル液を輸液するが,輸液速度に熱傷の公式は使えない.
毎時尿量を1ml/kg/hに保つように輸液する.
ミオグロビン尿が認められたら,1.5〜2ml/kg/hとなるように輸液を増量する.
腎尿細管に沈着する溶血色素を減少させるために
pH7.45以上を目標に重炭酸塩を静脈内投与する.

出典
電撃傷診断のポイント
今日の診断指診第7版2014
八戸市立市民病院救命救急センター所長今 明秀
[続く]

スターオブライフ

2012年08月18日 17:53

元々はアメリカ合衆国運輸省により、
赤十字との類似を避けて1973年にデザインされたマークで、
人命救助に関わる職場で活躍する人々の守り神として、
アメリカを中心とした世界中で救急医療のシンボルマークになっている。
日本を含む世界各国で救急車の車体にこのマークが描かれている。
突出した六本の柱には、
それぞれ次のような意味があり、
「detection」が頂点で以下時計回りである。
detection (覚知)
reporting (通報)
response (出場)
on scene care (現場手当)
care in transit (搬送中手当)
transfer to definitive care (医療機関への引き渡し)

スターオブライフの中に描かれたヘビの巻き付いている杖は
やはり医療のシンボルでアスクレピオスの杖と呼ばれる。
ヘビはアスクレピオスの化身であり、
その彼が持っていた杖で病を治すといわれている。

ギリシャ神話に出てくるアスクレピオスは太陽神アポロンの子。
半身が馬のケンタウロス族の賢人から
医術を教わり死から人間を救う術を覚え、
死者をも蘇らせたという。
しかしこれが死の世界の王の怒りを買い、
殺されて星座(蛇つかい座)にされてしまった。

古代ギリシャでは蛇を神聖視しており、
また健康のシンボルと考えられ、
ローマで疫病が流行した際に
アシクレピオスが蛇の姿で現れ市民を救ったという伝説もある。
そして彼が持っている杖は
父アポロンから贈られたもので、
1匹の蛇がからみついており、
今日医療関係のシンボルとなっている。  

救急車、ドクターヘリ、ドクターカーどれもスターオブライフがついている。

用語解説:脳死、低酸素性脳症、改正臓器移植法

2012年06月26日 18:00

6月27日水曜日今明秀テレビ生出演します。
青森県民放ATV.
午前10時から
おしゃべりハウス
今回のテーマは
「ジェネリック薬品」
後発メーカーが安い薬を販売しています。
解説します。


連載中の子供脳死判定について質問があったので用語解説します。
・・・・
脳死

改正臓器移植法は、脳幹を含むすべての脳機能が失われ、
回復しない状態を脳死と規定している。
判定では、
痛みを感じないほど昏睡が深く、
瞳孔が光に反応せず、
のどを刺激してもせき込まないなど脳幹反射が消えて、
脳波がフラットで、
自力で呼吸できない状態を確認する。

6歳以上は6時間以上、6歳未満は24時間以上の間隔を空けて2回検査し、
2回目の終了時が死亡時刻となる。

生後12週未満は法的判定の対象外。

いわゆる植物状態は脳幹の機能が残っており、
脳死とは別。
脳死は心停止、呼吸停止、瞳孔散大の「心臓死」と異なり、
人工呼吸器を着けて心臓は動いている。

・・・・・・・
低酸素性脳症
 
呼吸器や心臓などの循環器が働かなくなり、
脳に十分な酸素供給ができず、脳機能に障害が起きた状態。
心筋梗塞や心停止、窒息、各種のショックなどが原因で起きる。
脳への酸素供給が5分以上途絶えると、
そのあと呼吸が再開しても重い脳障害が生じる。
素早い蘇生が重要とされる

・・・・・・・
改正臓器移植法
 
1997年の臓器移植法の施行以来、
脳死からの臓器提供には本人の書面による意思表示が必要だったため、
提供ができるのは民法で遺言ができる15歳以上に限られていた。
2010年7月に施行された改正法では、
書面による意思表示が不要になり、生前に拒否の意思表示をしていない限り、
家族の承諾があれば脳死判定と臓器提供が可能になったため、
年齢制限もなくなった。
虐待を受けて死亡した子どもから臓器が提供されないよう、
18歳未満の場合は脳死判定する病院の委員会で
虐待の疑いがないか確認することが必要。

明日は、
第2話です。