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ドクターカーで輸血を運ぶ その4

2019年01月07日 16:02

八戸消防の救急車のナビーゲーションとドクターカーのナビゲーションは連動する。
お互いに位置を画面で確認できる。
後○kmでドッキングできるなどがわかる。
しかし、十和田市のナビゲーションとドクターカーのナビゲーションは、
メーカーが違うの連動できない。
残念なことだ。
IP無線と言う改善策もあるが、
上手く機能していなかった。

救急車内では悩んだ末に、
高速道路を選択した。
ドクターカーとのドッキング場所は高速道路の出口料金所が第一選択とした。
「輸血は遅れるが手術を早く」「手術は遅れるが輸血は早い」
この葛藤で、
前者を選択した。

救急車が高速道路に乗ったことは、
無線でドクターカーV3に届いた。

野田頭所長は、それまで走っていた右側車線から
方向指示器を左に出して、
次の交差点で左折した。
向かうは、
高速道路料金所。

先着はドクターカーV3だった。
わずかに遅れて救急車が着いた。
停車した救急車内に、
輸血が入ったクーラーバッグを届けた。
「開頭手術と開腹手術が必要です」近藤医長が野田頭所長に伝えた。
救急車は停車時間30秒以内で、
直ぐに八戸ERへ向かった。
走る車内で2ルートから緊急輸血が始まる。

後はERと手術室勝負だ。
(続く)

ドクターカーで輸血を運ぶ その3

2019年01月06日 18:01

救急車内では、
輸血到着まで、血圧と、酸素の維持努める。
二酸化炭素がたまると、
脳が腫れてくるので、
適正な人工呼吸で、二酸化炭素の排出を計る。

ERに着いてから、
おそらく緊急開頭手術になることを二人の医師は予想していた。

長い搬送時間だった。
ドクターヘリなら10分の直線距離なのに、
陸路では
大きく迂回する国道を通り、
高速道路に抜ける。

ここで問題があった。
高速道路上では、
救急車と
野田頭所長の運転するドクターカーV3はドッキングできない。
ドッキングポイントは料金所のみだ。
十和田救急隊は数回近藤医師に確認した。
この先、国道で進むか、高速道路に乗るか。
国道45号線なら間違いなくドクターカーV3とドッキングでき
輸血が開始できる。
高速道路ならすれ違う可能性あり。
(続く)

ドクターカーで輸血を運ぶ その2

2019年01月05日 18:57

バッグバルブマスクを工夫すると、
人工呼吸は可能だった。
先に、両測に胸腔ドレーンを入れることになった。
胸に入れチューブ入れると、肺から漏れた空気と血液が出てきた。
次は気管挿管をすぐに行った。
救急救命士が確保した静脈の針から、点滴を流し、
止血剤のトラネキサム酸を注射した。

輸液は全速力で入れた。
試しに速度を落とすと血圧は100以下に落ちそうだった。
頭部外傷合併の出血では、血圧100以上が必要だ。
低い状態が続くと、
脳が虚血になる。

近藤医長は、
緊急輸血の必要性をERに伝えた。
さらに、輸血をドクターカーで運んでほしいことを伝えた。
受けたのは野田頭所長だった。
輸血部に電話して、
直接O型血をもらいに行く。
輸血部で書類にサインをしてから
赤血球が入ったクーラーバッグを持って、
ERに走る。
ERの前にはドクターカーV3が停車している。
ドクターカーV3のカギは
ERの引き出しにある。
ドクターカーV3は日中はER前に駐車。
夜間はヘリポート横の電動シャッター付きの車庫に入れたある。
野田頭所長は車のカギを持ってERから飛び出した。
ガソリンエンジンは心地よい回転音で回り始めた。
6気筒タービンが回転始めた音だ。
赤色灯のスイッチを押す。
ギアをドライブに入れた。
右よし、左よし。
安全確認してから車を進めた。
病院前の信号の手前でピーポーサイレンスイッチを押した。
左折して国道45号線に向かう。
国道45号線は、津波被害が大きかった岩手県沿岸部を宮古市から北上し、
八戸市を通過し、
内陸に進む。
終着地点は十和田市。
ドクターカーV3はいったん国道45号線に向かった。
(続く)

ドクターカーで輸血を運ぶ

2019年01月04日 18:56

強風のためドクターヘリは運休していた。
上十三消防指令センターは八戸ドクターカーを要請した。
「十和田市郊外、交通事故、頭部外傷疑い」
近藤医長と思います。後村後期研修医がドクターカーの後部席に乗る。
ピーポーサイレンを鳴らして、
ドクターカーは北西に向かった。
十和田救急隊からの無線では
「意識JCS300昏睡状態、
腹式呼吸」
頭部外傷と頸髄損傷を疑う所見だ。

ドクターカーは十和田市につながる国道45号線を高速で走る。
十和田市内を超えて国立公園十和田湖方向にさらに進む。
上十三消防指令センターより無線が入る。
「救急車とドクターカーのドキング地点は
法量の大イチョウの駐車帯」
法量は地名。
そこに生えている樹齢1100年のイチョウの巨木。
樹高30m、幹周14.5mとスケールの大きさは、日本第4位。
長寿のシンボルの大イチョウがドッキングポイントなので、
意識がない頭部外傷だが、ひょっとしたらうまく行くかもしれないな、
と近藤医長は考えた。

八戸を出て約1時間後、
大イチョウの前で、ドッキングに成功した。
2名の医師は救急車に飛び乗った。
気道は閉塞し、いびき呼吸、口腔内出血あり。
呼吸は両側胸郭に皮下気腫を触れた。両側呼吸音が弱い。
呼吸数は早く24回。
バッグバルブマスクで人工呼吸して
酸素飽和度は94%。
循環は橈骨動脈(手首)で脈拍が弱い。
冷や汗あり。
血圧120台。心拍数が150で早く。ショック指数は1以上。
ショック指数とは心拍数 ÷血圧。
ショック指数1で出血量が1Lと推定できるという論文がある。
ショック指数1以上がショック。
外傷迅速超音波検査で腹腔内に出血あり。
意識は昏睡状態で全く動かない。瞳孔不同あり。

救急車は現場を出発した。
(続く)

深夜ピックアップドクターカーで医師3名出動 最終

2018年10月26日 18:48

5  ○歳代男性。
救急隊現場STARTtriageでCPA。
SCU STARTtriageで医師が黒判断。
二次輪番病院が収容不能で、
やむを得ず八戸ERへ搬送。
死亡。

SCUで優先順位を症例1気道緊急>症例2ショックと決定した。
この判断は結果的に症例1の救命につながった。
そして、症例3の女性の救命につながった。

藤田医師と佐々木、森医師の現場活動は勇気があり、
正確だった。
コンビニ駐車場をSCUにした八戸消防の判断はよかった。
難しい現場判断を下した救急隊長も立派だった。
車外放出全員を見つけだした消防隊の活動と夜間照明器具の威力はよかった。
一直線に進む、劇的救命チームはよかった。

せっかくの高級車に乗っていたのに、
安全装置を十分に受けられなかった若い5名の傷病者を気の毒に思う。
車の値段は、スタイルやエンジンパワーではなく、
主に安全装置とその開発費用にあることを、
5名の若い乗員は知らなかったのであろう。
安全装置は、シートベルトをした前提で開発されてきた。
生き残った2名の若者は、今後シートベルトを必ずするはずだ。
シートベルト未装着の高級車より、
装着している小型車の方が安全だ。

死亡した3名に合掌。


深夜ピックアップドクターカーで医師3名出動 完