中毒に使えない薬 後半

2018年05月07日 18:51

痙攣発作に、ジアゼパムを使ったが、けいれんがとれない。
担当医は、少し迷ったが
尿のインスタントビュー検査で三環系抗うつ薬が陰性だったことより、
痙攣重積に対して、フェニトインを使った。

残念ながら痙攣は治まらなかった。
ミダゾラムを増量し続けて、止めることができた。

すると今度は、
心電図波形が乱れた。
心室頻拍だ。
担当医は、電気ショックをかけた。

そして、翌朝内服していた薬が明らかになった。
三環系抗うつ剤を内服していたのだった。
新薬の三環系抗うつ剤。
インスタントビューとトライエージで感知できないと
文献に書いてあった。

とすると、尿検査で三環系抗うつ剤なしと判断したことが裏目に出たことになる。
あの、心室頻拍は、三環系抗うつ剤+フェニトインの反応だったかんもしれない。

男性は、その後、人工呼吸器の治療を続け、
3日目に意識が戻り、
気管チューブを抜去した。

フェニトインを使ってはいけないのは、
三環系抗うつ剤痙攣と
テオフィリン中毒痙攣と、

もう一つ、猫の痙攣。

中毒に使えない薬

2018年05月06日 20:50

5月連休は、八戸救命医師が全員で出勤し、
ER,救命救急センター、救命病棟、緊急手術、麻酔、ドクターカー、ドクターヘリと大変でした。
わたしも、毎日出勤。
ようやく5月6日夜になり、
余裕ができました。

さて、
意識障害、自殺企図、薬物服用の情報で
患者がERに運ばれたとき、
低酸素状態でも酸素を使えない時がある。
除草剤のパラコート中毒に酸素は使わない。
救命が難しくなる。

万病に効くと思われる酸素だが、
除草剤のパラコート中毒には足をひっぱることになる。
さらに酸素の害は
中毒ではないが
新生児の動脈管開存にも害だ。

もう一つ中毒に使えない薬がある。
ネオフィリン中毒にフェニトインは駄目。
三環系抗うつ剤中毒にフェニトインは駄目。
フェニトインは、けいれんに効くよく使われる薬。

意識障害、自殺企図、薬物服用らしい男性が運ばれてきた。
薬物服用の正体を突き止めるたい。
その時
尿中迅速簡易検査がある。
中毒物質を当てるインスタントビューとトライエージ。
この検査では数種類の薬物を調べることができる。
薬物中毒で意識が悪いときに、
患者の尿を数滴使用して、
尿中の薬物反応をみる。


三環系抗うつ薬は陰性だった。
ベンゾジアゼピンは弱く陽性だった。

担当医は、薬物内服から時間経過が24時間はあると推測した。
意識障害の進行はないことから、
経過観察で救命救急センターに入院させた。
受診から7時間後深夜に、
痙攣が起きる。
痙攣は長く続き、ジアゼパムで止まらなかった。
痙攣重積のガイドラインでは、
フェニトインを使うことになっている。
最近の論文では、
イーケプラーをはじめ、
別の薬剤の有効性が記載されているが、
まちがいなく、ガイドラインではフェニトインがまだ主流であった。
ただし、
フェニトインが使えない痙攣があることはあまり知られていない。
ネオフィリン中毒による痙攣にはフェニトインは効果ない。
三環系抗うつ剤中毒による痙攣にフェニトインを使うと、
不整脈が起こり最悪の心室細動になる。
(続く)

マンガ劇的救命日記 第9話

2018年05月02日 18:11

劇的救命日記 第9話

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劇的救命日記のマンガ最新作
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ご覧ください
第9話



突然の強い胸痛 最終

2018年05月01日 18:40

外に停車している赤車の屋根についている吹き流しはだらしなく下がっていた。
風はないからだ。
離陸は全く揺れなかった。
男性は救急車内で、酸素5Lで経皮酸素飽和度は98%まで上がっていた。
ヘリコプターで高度を上げると酸素飽和度が下がる。
わたしは、離陸直前に酸素流量を10Lに上げた。
酸素配管から勢いよく流れる酸素の音は、
ヘリコプターのエンジン音で完全にかき消されていた。
男性は地上で注射した麻薬のレペタンが効いてきたのか、
柔らかい表情になっていた。
呼吸数は12回で、正常だ。

手術用手袋で作った一方向弁ハイムリッヒバルブは
順調に余分な胸腔の空気を排出していた。
男性の上がりが悪かった右胸も上がるようになってきた。

私は室内通話で整備長に話しかけた。
「整備長、ERへ無線を入れていいでしょうか」
「はいどうぞ」整備長
OJTシートの窓から青い太平洋と灰色の工業地帯が見えた。
八戸市内上空に入ったことがわかる。
「八戸ドクターヘリ11より、
八戸ER
どうぞ」
「八戸ERです。どうぞ」
「右気胸による多低酸素状態、強い胸痛、起坐呼吸でした。
循環は安定していました。
右胸腔ドレーンを入れてます。
末梢輸液しています。
レペタンを使いました。
起坐呼吸、胸痛、低酸素ともに治っています。
胸腔バッグをヘリポートに持ってきてください。
ERへ入室します」
「八戸ER了解」

病院の建物が窓から見えた。
「着陸します。
シートベルトをもう一度確認にしてください」機長
「はい」

ものすごい強い胸痛だった男性だったが、
緊急処置でうまく治せた。

ERに着いた男性から、直ぐにお礼を言われた。
すごくいいことをしたと思った。
男性は数日後に手術となった。

血圧は下がっていなかったが、
頻呼吸と苦しそうな顔つき、
胸腔ドレーンを入れずに
高度を上げた飛行をしていたら
低酸素が進行したかもしれない。
ショックになる気胸を緊張性気胸と呼ぶ。
この男性は、緊張性気胸の手前だったのだろう。
緊急処置がうまく行ってよかった。

日本中、ゴールデンウィークに入った。
八戸ERでは、全員体制で医師もナースもそれに対応する。

突然の強い胸痛 完

突然の強い胸痛 その10

2018年04月30日 18:38

ヘリコプター内では、
酸素チューブをストレッチャー左側の携帯酸素タンクからヘリコプター内の配管されている、酸素コルベンに繋ぎ繋ぎ変える。
心電図モニターを付ける。
血圧計を巻く。
患者と室内会話できるようにヘッドフォーンを男性にかぶせた。
「エンジンスタートどうぞ」私は機長に向かって声をかけた。
「はいわかりました」機長は計器を見て、
正面パネルの下中央のバッテリーメインスイッチを引っ張って押し上げた。
続いて
左右のエンジンのコンピュータースイッチを引っ張って押し上げた。
天井のメインローターがゆっくり回り始める。
後部席では、
男性に声をかけながらてきぱきとモニター類の装着がされる。
整備長が、機体の周りを肉眼で異常がないことを確認し一周する。
メインローターの回転数がだんだん早くなる。
整備長が左前ドアを外から開けた。
まず左足をスキッドに載せた。
それから、両腕で体を持ち上げ、
右足をコパイロット席の床に挙げた。
さらに体を持ち上げ、腰をシートに着座させた。
体を正面視させ、ドアを閉める。
ドアの窓の下側の縁に上方に飛び出しているドアの開閉ノブを反時計回りに90度回した。
少しの抵抗の後、ロックされたのが指に伝わる。
直ぐにシートベルを締め、ヘルメットを被る。
エンジン音が高くなる。
機内では、大声でないと会話できない。
私も、ヘルメットをかぶってシートベルトを締めた。
それからナース、田中医師、患者の様子を見る。
「機長、後ろの離陸準備はOKです」
「はい、間もなく離陸します」
後ろに乗っている我々も、エンジン音の高さで
まもなく離陸できることがもヘルメット越しでも耳で確認できる。
ナースは
「もうすぐ離陸です」
と、男性に口パクと、手のタッチで合図した。
(続く)