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北海道地震 その3

2018年09月23日 18:31

14:00頃、正式に出動要請。患者搬送機能をもつ車両で参集せよ。
苫小牧から22:00フェリーに乗って北海道に入る計画となった。
早急に物品を準備し、病院搬送車に積み込んだ。

19:30 DMAT出動式が行われ、
野田頭救命センター所長が訓示をする。

4名は車両に乗り込み出陣した。
現地は水不足の情報があり、八戸で水を買い込んで乗船した。
2等船室には青森市民病院、むつ病院の隊員も乗り込んでいた。
明日予想される任務を考えつつ、英気を養い、早めの就寝となった。

9月7日午前 6:00 お盆並みに混んでいたフェリーは苫小牧に着岸した。
着岸する30分前には船内放送が入る。
1階の車両格納室へ移動する。
病院救急車に4名は乗りこんだ。
若干の睡眠不足の感覚は、これから始まる災害救出活動を考えた時に、
ふっとんだ。
フェリー出た車両は北海度の地面にタイヤを回して、順序よく走り出した。
空は曇天。
停電の影響により信号はすべてついていなかった。
普段LEDで明るい道路脇のコンビニも閉まっている。
北海道特有のセイコマートも暗い。

八戸港を出港した昨夜は、
DMAT参集病院は苫小牧市立病院だったが、
明け方には、参集病院が札幌医療圏活動拠点本部がおかれている、
札幌医科大学病院に変更になった。
幸運なことに、インターネットが通じる。
15年前の中越地震ではダウンしたインターネット。
時代の流れで、
日本も災害に強い頑丈なインターネット回線に改善された。

4名は札幌を目指した。
苫小牧インターでは、高速道に入ることができた。
幸運だ。
地震から約24時間経過していた。

北上。
札幌市街に入ると、主要な道路には信号がともっていた。
札幌医科大学到着、ミーティング中の災害対策本部にあいさつし、受付をすます。
(続く)

北海道地震 その2

2018年09月22日 18:29

北海道地震 その2
もう一つの方法は自衛隊ヘリだ。
自衛隊ヘリCH47が三沢航空自衛隊にある。
これを使って北海道へ渡る方法だ。
八戸ドクターカー1号は、
自衛隊ヘリCH47に格納できるサイズに作ってある。
天井の赤色灯は、高さがない米国製を選んでいる。
車幅は狭いいる2000ccクラスだ。
国内のドクターカーが見た目重視で住宅街を走ることを
想定して車種を選んでいることととは違う。
災害時に、いち早く空路で出動する。
その時現地で走る4WD車を一緒に載せて行く。
そんな計画を9年前に立てて、
作ったのがドクターカー1号だ。
ついに、その時が来たかと思った。
私は、DMATの出動命令を待った。

午前中には、DMAT本部から
待機命令が来た。
出動命令ではない。
八戸DMAT 隊員は、
それとは関係なく、
出動準備を終えるところだった。

そして、昼には東京のDMAT本部から出動命令が来た。
だが、
青森県庁からは待機するようにと言う指示だった。
八戸DMAT隊は待機した。

2時間以内には出動許可になることを私は予想した。
青森県庁は、八戸DMATのほかにも、
複数DMATを北海道へ派遣するつもりなのだろう。
そのため、一度に北海道入りする交通手段を選んでいるはずだ。
青森県の中心には青森市があり、
函館までフェリー航路がある。
そちらを使う事の考えがあるはず。
函館港から震源地の室蘭方面の陸路情報を集めているものと推測された。
あるいは、自衛隊ヘリCH47で三沢自衛隊空港から離陸も。

八戸DMATメンバーは、日中は通常業務をしながら出動に備えていた、
看護師信田、折田、業務調整員(ME)中村、医師近藤。
(続く)

北海道地震 

2018年09月20日 18:54

2018年9月6日午前3:00
北海道で震度7の地震が発生した。
八戸も揺れた。
長い時間揺れた。
テレビのニュース速報では、
震源地は北海道。
八戸は震度4.

当直医と当直師長は、
ERとなりの麻酔科外来室にすぐに集まった。
休日夜間は震度4以上で救命当直医と師長が集まる約束になっている。
そして、災害活動が必要か議論する。
もし災害活動が必要なら、
暫定災害対策本部を立ち上げる。
災害レベルを宣言する。

震度5以上なら、院長等が自主登院し暫定本部から引き継いで災害対策本部を立ち上げる。

この日は、深度4で、八戸市内に被蓋はなく、
暫定災害対策本部の必要性はないと判断された。

しかし、北海道の被害は大きいことは八戸での揺れの大きさから容易に推定できた。

青森県は北海道の唯一の隣県。
八戸市は、苫小牧とフェリー航路で直通。
北海道への空路は絶たれている。
北海道への鉄度の青函トンネルは不通。
北海道新幹線は止まっている。
函館港から陸路札幌までの通行は止まっている。
つまり、本州から唯一の安定した最短距離が
八戸―苫小牧フェリーだった。

私は、DMAT隊を1隊は、海路で苫小牧入り。
もう1隊はドクターヘリで苫小牧入りを考えた。
CSで空路情報を探ると、
ドクターヘリで苫小牧へ飛んでも、
給油地がないという。
空港は機能停止していて使えないと。
青森県防災ヘリが即座に北海道へ応援に飛んだが、
給油ができなくて苦心していると。
ドクターヘリでDMATが北海道へ渡っても、
北海道ではヘリコプターを使った活動はできないし、
八戸へヘリコプターが帰ることもできないと。
フェリーでは時間がかかるが、仕方ない。
(続く)

トラクター転落事故 最終

2018年09月18日 18:56

そんな時は、ヘリコプターがカラで離陸し、
安全に患者を収容できる平坦な場所まで飛んで行き、
患者と医師看護師が乗る救急車を待ち受ける。
「患者死亡のため、ヘリコプターに収容しません。
我々は撤収します」ナース

私は、救急隊長に不明なことがあれば警察協力医へ情報提供できることを伝えた。
草地を歩きながら携帯電話に話す。
「ダイレクトブルーですか。
十和田市にドクターヘリ事案は
患者死亡のためカラで病院へもどります」

後席に、3名が乗り込みシートベルトを締めた。
エンジンスタートし、
まもなく土からスキッドは離陸した。
まず右スキッドが離れ、次に左スキッドが離れた。
斜めに高度を上げてゆく。

強い日差しの中をEC135は病院へ向かった。
患者用のストレッチャーは無人だった。


トラクター転落事故 完

トラクター転落事故 その4

2018年09月17日 18:54

ドクターヘリの胴体の下についている2本のスキッドは、
草地の土をしっかりと噛んだ。
機長が着陸時間を宣言した。
整備長が「先に右ドアを開けます」と言って左前でドアから外に出た。
私は、森医師とナースに
「現場でレスキュー隊の救助活動が始まるかもしれない。
その場合は狭い場所に進入して救命処置をすることもある。
ヘルメットをかぶって現場に向かうよ」と伝えた。
メインローターが回る下を森医師、私、ナースの順で外へ出た。
草地の土は割と硬かったが、
2トン近い重量のEC135が着陸すると、
約5zmくらいは沈む。
私は安全靴の編み上げ紐を上まで締めておいた。
ダウンウオッシュで揺れる草地を我々は走った。
20m先で消防隊が手招きする。
草地から右下方向に高さ2mくらいの斜面を降りる。
すると、林の中にトラクターが見えた。
車体はひっくり返っていた。
先着した隊長が
「CPAです」とこちらに叫んだ。
ヘルメットを被ったままで、私は男性に接触した。
頸動脈の脈拍は触れず、呼吸の胸の上がりはなし、痛み刺激に反応せず、
眼球は乾燥している。顎は硬くて開かない。
体温は気温が高いせいか冷たくない。
「蘇生不能です」私は隊長に強く伝えた。
森医者は超音波検査をする。
「心静止、心嚢液なし、腹腔内出血なし、血胸なし」
心停止の原因は胸部外傷ではない。
よく観察すると、骨盤にトラクターの中心が乗っていた。
私は隊長に伝えた
「おそらく死因は骨盤骨折でしょう。警察協力医に後は任せます。
ドクターヘリは撤収します」
ナースが機長に携帯電話する。
機長と整備長はヘリコプター近くで待機している。
二人は着陸したヘリコプターから離れない。
空のプロの二人は患者をヘリコプターへ収容する場所がこの草地なのか、
それとも2kmくらい進んだ空き地にするかの決定を待っている。
草地の不整地が、患者を乗せたストレッチャーが進行できないことがある。
土や雪の柔らかさで、患者を乗せたストレッチャーが沈み立ち往生することがある。
(続く)